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北欧通信

ILLUMS Summer Recommend*2007*
今回、イルムスのブランドマーケティングスタッフがスウェーデンのオレフォス・コスタボダのオフィスや工場を訪問しました。
デザイナーとの語らいや、そのブランドの魅力に迫ります。
イルムスの魂がやどるデンマークのコペンハーゲンから汽車に乗り、海を渡りスウェーデンのマルメへ。
マルメからまた乗り換えて、目指すはレゼボー駅。ちょっと異邦人には慣れない乗り換えだが、汽車は容赦なく出発する。
車掌に何度もこの汽車は自分の目的地に行くのかと確認し続け、その間は二時間ばかりか。その内汽車は森の中を通り抜け、ますます不安は増すが、汽車もスピードをあげていく。レゼボー駅が次だと、停車時間が短いのか車掌さんが教えてくれ、長い出張となっている自分の荷物の運びだしも手伝ってくれる。降りてすぐに車掌に一言、「駅はどこですか?」。車掌は微笑み、汽車はこちらの不安をあざ笑うように出発していった。不安を覚えながら一人、スーツケースを引っ張っていると、その先に大きな笑顔の女性がたって出迎えてくれていた。
ここでようやく一安心。スウェーデン南東部に位置するスモーランド地方には、たくさんのガラス工房が集まっているが、この中で最古の工房が、日本でもおなじみのガラスメーカー・コスタ ボダの前身であるコスタ。1742年、スウェーデン国王カール12世配下の2人の将軍が、木材と水源に恵まれたこの地域にガラス工房を設立することを命じられ、2人はドイツからガラス職人を呼び寄せることになる。
設立当初は実用性の高い製品の製造を続け、ストックホルムで建設中だった王宮の窓ガラス等を制作。現在でも、当時のガラスが王宮西側に17枚保存されている、という。2人の将軍の名前、KoskullとStaelの一部をとって、この工房はコスタ(Kosta)と名付けられた。
古今東西、権力者というものは自分の名前を残したがるらしいとここでスタッフと談笑。心もだんだんリラックスしてくる。
一方、もうひとつの前身がボダだ。名前は地名に由来し1864年に設立。ガラス工業製品をプレス製法で生産していたが、1953年に彫刻家のエリック・ヘグルンドがデザイナーとして加わることで、その製品群は自由奔放で奇抜、創造性あふれるアーティスティックなものに変身した。
彼の銅像は現在オレフォス村にあり、その目線の先には新しくできたオレフォス・バーという名のクリスタル・バーがある。
コスタとボダ、この2つの工房が1963年に合併し、コスタ ボダが誕生。熟練したガラス職人と独創的なアーティストのコラボレーションで、芸術性、完成度の高いガラス製品を生み出すメーカーになった。その後も絶えず注入されるデザイナーの新たな感性によって、伝統を受け継ぐとともに、アーティスティックで創意あふれた作品を創り続ける。その後、よりモダンでクリアなガラスを作り続けるオレフォス社と合併し、現在のオレフォス・コスタボダ社とクリスタル王国の名を持つスウェーデンの中で、最も古い、唯一無二の工房となっている。
コスタ村、ボダ村、オフォス村、オレフォス村、四つの村にその工場はある。ボダ村とオフォス村はコスタボダ独特の芸術的のみガラス工芸を作り、コスタ村、オレフォス村は機械化された最新の生産技術も備えつつも、人の手を存分に必要とするアートピースを24時間休みのない溶炉のまわりで作り続けていた。
ガラス吹き職人が溶炉のそばで格闘している様は一瞬の油断も許さない緊張感がある。
高みを極めようとする人間独特の緊張感を回りに漂わしている。なんだか、ぞくぞくと鳥肌がたってくる。
スモールランドという場所は、森と湖に囲まれた自然が美しい場所だ。訪問した日は非常に天気が良く、世界で一番長い日を数週間後に控えたその日が暗くなったのは夜の10時頃だったか。案内をしてくれた女性が言った一言が耳から離れない。
「今日の湖の色は違う・・・。」何気ない一言だが、すごく新鮮でこの人たちの色の感性の豊かさに触れる思いがした。
ここで、出会ったデザイナー・ガラス吹き職人の話を少し。オレフォス・コスタボダはその工房にスタジオを併設して、デザイナーを数人抱えている。その中で、Ingegard Ramanさんに話を聞く機会を得た。彼女はオレフォスとして初めて黒を取り入れたクリスタルグラスを取り入れたデザイナー。話をしてても非常に聡明だ。彼女とは滞在した元オレフォス・オーナーの自邸だったオレフォスの来客用のゲストハウスのベランダで長い夜を通していろいろな話をする機会を得た。彼女のスタジオはこのゲストハウスの横にあり、目の前に池が広がる。
時間が出来るとこの池を眺め、水の流れ、鳥の鳴き声、笑い声を聞きながら、たくさんのインスピレーションを受けているという。
そんな彼女のスタジオは、建物の老朽化が進んでいるため、会社は改装をしようとしているのだが、彼女はなかなか出ない。
こんな素敵な場所、なかなか惜しくて出たくないようだ。そんな彼女にオレフォス・コスタボダでのガラス作りの面白さを聞いてみた。
ガラス吹き職人との関係は非常に重要。自分のイメージを具現化してくれるのは彼らであり、如何にコミュニケーションを取るかが一番大事で最も大変。元はといえばデザイナーの無理な要望に保守的なガラス吹きはそんな事は出来ないと言い、議論を積み重ねるうちにチャレンジを試みる。時にはここから全く新しい技法があみだされ、結果面白いものが具現化されるという具合のようだ。
ここで非常に重要なのはHonesty。これを前提にしたコミュニケーションで皆で知識を共有し、1400度の熱い窯の周りで皆でベストを尽くす。
そうして、新しいものづくりが行われている。何だか、自分も同じような気持ちで仕事ができているだろうかと自問自答。
繊細なフォルムと模様が美しい彼女のSlow Foxのグラスのデザインの由来を聞いてみた。SlowFox の直線・螺旋・水玉・ボカシのパターンのイメージは男女が手をとりあって踊る足跡をなぞった線を形にしたものだと。
決まったステップを踏むわけでもなくユラユラとお互いの気持ちの赴くままに動いている・・年配のカップルのイメージだろうか。デザインしたものには一つ一つ物語りがあるとラーマンさんは言いながら、とめどのない話を楽しむ。
スウェーデンのガラス工芸は、ベネチアングラスのような派手さはないが、シンプルな美しさがあるぬくもりの感じられる。これからの夏に向けて、このガラス器に囲まれる生活を過ごし、デザイナーや職人の思いを少しでも感じ取ることができたら...。そんな思いを馳せながら長い夜は更けていった。

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